品川で子育てしているSEのゆるゆる芋づる式日記

品川区での保活記録(2016年入園)、子育て、ドラマなどなど一応東大なミーハーSEが綴っています

感想・羽田圭介「ワタクシハ」「隠し事」「走ル」「スクラップ・アンド・ビルド」

※ネタバレありです。ご注意ください。

羽田圭介さんの著作を何冊か読んでいます。

2015年に又吉直樹さんの「火花」とともに「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を受賞した後、「又吉じゃない方」と自虐しながら頻繁にTVに出演していた姿を覚えている方もいらっしゃるでしょうか。

「変な人だな」と興味が湧いて、一昨年育休中に図書館で「ワタクシハ」を借りたら面白かったので、その後その他の作品も少しずつ読んでいます。

ちなみに、最近(自分がTVを見られないので)どうしているのかな?と思って調べたところ、ミュージカルに出演予定だそうです。
ameblo.jp

何冊か読んで

・主人公は、いわゆるちょっと「意識高い」若い男性で、妙にこだわりが強いタイプが多い。
・自身の経験をものすごく活用していて、いい意味で「たくましい」と感じる。(もちろん経験そのままではなく小説として成り立っているから面白いんだけれど。)
・だいたい彼女をちょっと小ばかにしてるところがあるけど結局彼女の方が「上」だったりする。
・ストーリーも面白いけどそれ以上にディテールを楽しむのが醍醐味かと個人的には思う。

以下、ざっくりざざざざ、とこれまでに読んだ作品の感想を、読んだ順に。

「ワタクシハ」

「ワタクシハ」

「ワタクシハ」

元天才ギター少年が普通に就職活動するがなかなかうまくいかない物語。

作者自身が高校生で文藝賞を受賞(当時は最年少受賞)した後に大学進学して一般企業に就職しているので、その時の経験がふんだんに盛り込まれているのだろうと推測。

(もっとも、主人公と違って作者自身は大学在学中に芥川賞の候補にもなり、就職しなくてもそのまま専業になれる状況だったと思われる。)

就活をテーマにした朝井リョウの小説「何者」が映画化されたので、こっちはされないかなぁ(「何者」は読んでいないです・・・)。でも観てみたい。まろやかにしないでそのままやって欲しい。

とにかくリアル。すごく面白い。オモローとのやりとり、ブス山さんのひとこと、高木のアプローチ・・・。就活をやった事がある人はきっと引きこまれると思う。

最終的な終着点が妙に納得してしまう。彼女についてはいい意味で「予想を裏切る展開」なのかな。

どろどろだった自分の就活も思い出してしまいつつ、あっという間に読めました。

「隠し事」

隠し事 (河出文庫)

隠し事 (河出文庫)

彼女のガラケーのメールを盗み見する物話。といったら身もふたもないな。。

読み進めるうち、ガラケーの操作を忘れかけている事にしばし気づく・・・。

も少し色々裏があるかなと思ったら案外あっさりしてた。なんとなくだけど、ストーリーよりディテールを楽しむのがいいかと思う。

この話の中で主人公が喫煙室で会話を交わすシーンがしばし重要なキーとなるのだけど、てっきり作者も吸う人なのかなと思ったらそうではないらしい。
羽田 圭介さん:おとなの煙談 : カルチャー : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

ものすごく余談ですが、「主人公がスモーカーの場合、作者もスモーカーの事が多い」と勝手に考えてまして、タバコシーンが出てくるとなんとなく印象に残ったりします。

喫煙者として印象に残っているのは、筒井康隆(昔、嫌煙家に対する批判を書いていた)、昔の村上春樹藤子・F・不二雄手塚治虫などなど。藤子先生と手塚先生は漫画の自画像からですが。昔の人はたいがい吸ってたのでしょうね。

「走ル」

走ル (河出文庫)

走ル (河出文庫)

高校生がひたすら自転車こいで北へ向かう物話。
Google Mapsで地図見ながら読みました。

面白いのは、ロードムービー的な爽やかな感動的描写や青春感はあまりなく、その間主人公がひたすら位置情報・筋肉の調子・戻った時の言い訳等現実的な事をずっと考え続けている事。それが逆にロードムービーぽいのかも?

作者自身が昔マウンテンバイクをやりこんでいて旅をした経験もあるそうで(昨年日経の夕刊で毎週月曜に連載していたエッセイの中で語っていた)、月並みな言い方だけど、走っている様子がとてもリアルに感じられる。

最後の方ちょっと驚きの展開に。やはり彼女が・・・。

「スクラップ・アンド・ビルド」

スクラップ・アンド・ビルド

スクラップ・アンド・ビルド

無職になって再就職活動&資格試験勉強中の孫が本気で祖父の「介護」をする物話。

高齢化社会についてかなり鋭い言葉が並んでいて、仮に小説でなくてテレビで言ったらかなり物議を醸すのではと思った。とにかく面白くて一気に読めた。

今まで読んだ限りでは、羽田圭介の小説の主人公には基本彼女がいて、主人公は若干その彼女を小ばかにした傾向がありつつ最後には彼女の方が一枚上だったりする。ただ、この小説の中の彼女は「優先席で周りに誰がいようが座る」タイプだそうでちょっといけすかないな。

甥っ子の体重が「一歳半で五、六キロ」とあったのは明らかに要修正ではないかしらん(^^;)

生きているだけでいいのか? 老いて何か「生産的」な事はできなくなり周りに世話をされながら生きていたら、もう「価値」は無くなってしまうのか? というテーマを読んでいて勝手に考える。小説は作者なりの示唆をしつつ終わる。読後感はよかった。

そのうちこちらも読みたいと思います。